もう我慢しない!“お尻の痛み”原因TOP3と車いすユーザーのための即効対策
友だちに共有する
「車いすに座り続けているとお尻が痛い」「痛みで集中力が続かない」と感じていませんか? そのお尻の痛み、もしかしたら日常の座り方や車いすに潜む意外な原因かもしれません。 本記事では、車いすユーザーに多い“お尻の痛み”の原因TOP3を分かりやすく解説。車いすユーザーのための即効対策として、それぞれの原因に今日から実践できる具体的な対策を3分で読み解きます。 先に対策だけ知りたい方はこちらへジャンプ。
こんにちは、ストアディレクターのイシイです
私は、介護福祉士として4年間ケアワーカーを経験した後、現在はシーティングに携わり、10年目を迎えています。
この記事では、お尻の痛みの具体的な原因TOP3と、車いすでの即効対策をご紹介します。
- 車いすユーザーが抱える「お尻の痛み」の実態
- **知っておこう!お尻が痛い原因 TOP3**
- 一点に集中する「局所的な体圧」
- 皮膚と座面の「摩擦・ずれ( Shear Force )」
- 不安定な「姿勢と骨盤の歪み」
- 原因別!いますぐできる対策
- 対策1:局所的な体圧集中には「最適なクッションと姿勢変換」
- 対策2:摩擦・ずれ( Shear Force )には「安定した座面と正しい移乗」
- 対策3:不安定な姿勢と骨盤の歪みには「車いす全体の最適化」
- まとめ:車いすでの生活をもっと快適に
車いすユーザーが抱える「お尻の痛み」の実態
車いすでの生活において、「お尻の痛み」は多くのユーザーが共通して抱える悩みの1つです。単なる不快感にとどまらず、痛みが活動性の低下を招いたり、さらに進行すると床ずれという、深刻な皮膚の損傷につながる重要なサインとなります。
前回の記事「体圧と血流のしくみ図解」で解説したように、長時間同じ体勢で座り続けることで、体圧が集中し血流が阻害されるメカニズムがお尻の痛みやトラブルの大きな原因となります。今回は、長年のシーティングサポート経験から、特に頻繁に見られる“お尻が痛い”原因TOP3と、その具体的な対策に焦点を当てていきます。
知っておこう!お尻が痛い原因 TOP3
1. 一点に集中する「局所的な体圧」
特定の骨(坐骨結節、仙骨、尾骨など)に長時間、体重が集中することで、その部分の血管が圧迫され、血流が阻害されます。これはお尻の痛みの最も直接的な原因の一つです。特に、仙骨座り(骨盤が後ろに倒れて座る姿勢)や、身体が左右どちらかに傾いた座り方、体圧分散機能の低いクッションを使用している場合に起こりやすくなります。
血流が低下すると、神経への酸素供給が不足してしびれや痛みが生じ、組織への栄養が届かなくなることで細胞ストレスが高まります。これが続くと、炎症や発赤、最終的に**床ずれ**へと発展するリスクがあります。
2. 皮膚と座面の「摩擦・ずれ( Shear Force )」
車いすから立ち上がる際や、座り直す時に、お尻の皮膚が座面とこすれたり、体が滑り座りになったりすることで、皮膚および深部の組織に引き裂かれるような力が加わります。これを「摩擦・ずれ(Shear Force)」と呼びます。
この力は、皮膚の表面的な損傷だけでなく、表面からは見えにくい**深部の組織**に大きなダメージを与えます。内部で損傷が起きると、強い痛みの原因となり、床ずれの発生や悪化につながる非常に重要な要因です。特に、滑りやすい素材のクッションやシートを使用している場合、または移乗動作が不安定な場合に起こりやすくなります。
3. 不安定な「姿勢と骨盤の歪み」
車いすのセッティングやクッションが身体に合っていないことで、骨盤が左右に傾いたり、前方に滑り落ちそうになったりする姿勢の崩れも、お尻の痛みの大きな原因です。これにより、体の特定の部位に負担が集中し、一部の筋肉や神経が不自然に引き伸ばされたり、圧迫され続けたりします。
例えば、フットサポートの高さが不適切だったり、バックサポート(背もたれ)の支持が不足していると、骨盤は安定しづらいです。また、座位保持効果の低いクッションの使用なども、身体が不安定になりやすく、この不安定な姿勢はお尻の痛みだけでなく、肩や首、腰などの痛みも誘発する可能性もあり、全身の歪みや不調にもつながります。
原因別!いますぐできる対策(車いす視点)
対策1:局所的な体圧集中には「最適なクッションと姿勢変換」
最も重要かつ基本的な対策は、体圧を効率的に分散させることです。
-
適切なクッションの選択:
体圧分散能力の高いクッション(エアセル、ゲル、モールドウレタンなど)を選ぶことが重要です。しかし、単に体圧を分散するだけでなく、骨盤や体幹を安定させる「座位保持力」も非常に大切です。 高い除圧効果を持つクッションの中には、その特性上、調整や使用状況によっては姿勢の安定に配慮が必要なものもあります。 ご自身の体形や活動レベル、そして痛みの状況に合わせて、クッションが身体の形状と骨盤の安定に合っているか、沈み込みすぎずにしっかりとサポートできるかを確認してください。例えば、モールド形状で骨盤を適切に保持するタイプは、体圧分散と姿勢保持の両面で効果的です。

-
こまめな姿勢変換(圧抜き):
どんなに良いクッションを使っていても、長時間同じ姿勢でいることは避けるべきです。前回の記事でも触れたように、シーティング用クッションで体圧分散が出来ている状況でも、最低1時間に1回、10~15秒程度の「圧抜き」動作を習慣にしましょう。具体的には、前傾、後傾、左右への体重移動など、お尻の圧迫部位を変える動きを取り入れます。

対策2:摩擦・ずれ( Shear Force )には「安定した座面と正しい移乗」

皮膚への余計な負担を防ぎ、摩擦・ずれの力を最小限に抑えることが大切です。
-
滑りにくい素材の活用:
車いすの座面カバーやクッションカバーの素材にも注目しましょう。滑りやすい素材は、ズッコケ座りなどの姿勢崩れを誘発し、過度な摩擦・ずれのリスクを高めます。また、接触面(座面部)の生地にストレッチ性があるものを使用しましょう。理由としては、ストレッチ性がないものだとクッションの中身の沈み込みに追従できず、坐骨などの突出箇所に圧力が集中してしまいます。これをハンモッキング現象と言います。
-
正しい移乗方法の習得:
車いすからベッドやトイレなどへ移乗する際、お尻を引きずるような動作は皮膚に大きな負担をかけます。介助者と協力し、または自力で、お尻が浮いた状態でスムーズに移乗できるよう、正しい方法を習得することが重要です。必要に応じて、トランスファーボードなどの補助具の利用も検討しましょう。
-
車いすの機能の使用:
前提として、車いす全体のセッティングの最適化は必須です。リクライニングやチルト機能がある車いすの場合、背もたれだけを倒すリクライニング機能だけを使用すると、確実にお尻は前方にずり込みやすくなります。
姿勢を崩さずに角度を変えるコツは、まずチルト機能で座面ごと後方へ傾け、それからリクライニングで背もたれを倒すことです。この順番と適切な角度調整を守ることで、座位姿勢中の滑り座りなどの姿勢崩れを大幅に防ぎ、摩擦・ずれの力を効果的に軽減できます。
対策3:不安定な姿勢と骨盤の歪みには「車いす全体の最適化」
お尻の痛みの根本解決には、身体全体を支える車いす環境の最適化が不可欠です。
フットサポートの調整:足がフットサポートにしっかりと接地し、膝と股関節が約90度になるように高さを調整しましょう。フットサポートが高すぎると大腿部が浮き、坐骨への圧集中を招きます。逆に低すぎると大腿部の圧迫や、いわゆる「ずっこけ座り」といった姿勢崩れの原因となります。これらの不適切な調整は、お尻や腰に過度な負担をかけてしまうため注意が必要です。
バックサポート(背もたれ)の調整:体幹をしっかりと支え、骨盤が後傾しないようにサポートできるバックサポート(背張りの調整ができるタイプや、より安定性の高いハードシェルバックなど)を選び、適切に調整しましょう。特に、調整機能がない背布タイプの車いすの場合では、腰部を自然なS字カーブに保つためのランバーサポート(腰用クッションなど)の活用が効果的です。
アームサポート(肘掛け)の調整:肘掛けは、腕の重さを支えるだけでなく、体幹の安定にも寄与します。適切な高さに調整することで、上半身の負担を軽減し、結果としてお尻への負担も減らすことができます。
【重要な視点】正しい姿勢と快適性について
「正しい姿勢」が全ての人にとって、必ずしも「快適な姿勢」とは限りません。 ユーザーさんの声を第一に、身体状況や生活における目標(ゴールの方向性)を考慮して調整することも必要です。
専門家への相談:痛みが続く場合や、ご自身でのセッティング調整が難しい場合は、シーティング専門の販売店や医療従事者に相談しましょう。身体状況に合わせた車いすやクッションの選定、専門的な調整を受けることで、より効果的な解決策が見つかるでしょう。
返信目安:翌営業日
まとめ:車いすでの生活をもっと快適に
- 車いすユーザーが感じるお尻の痛みの主な原因は、**「局所的な体圧集中」「摩擦・ずれ(Shear Force)」「不安定な姿勢と骨盤の歪み」**の3つです。
- 痛みは身体からの重要なサインであり、放置せずに適切な対策を取ることが大切です。
- 対策としては、**最適なクッションの選択とこまめな姿勢変換、滑りにくい素材の活用と正しい移乗方法の習得、そして車いす全体のフットサポート・バックサポート・アームサポートの最適化**が挙げられます。
- 自分に合った車いす環境を整えることで、お尻の痛みを軽減し、より快適で活動的な生活を取り戻すことができます。困った時は、いつでもシーティングの専門家にご相談ください。
次回予告:座面高さ・奥行き 数㎝ずれの弊害(11月21日公開)